取引実績5000点以上の浮世絵・版画鑑定のスペシャリストが査定
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2026 01.16
買取日記
今回は花鳥の木版画浮世絵を中心にまとめて10点85,900円で買取させていただきました。
花鳥画(かちょうが)とは、花や鳥を中心に、自然の風景や生きものを描いた絵画のジャンルです。
野に咲く草花や、空を飛ぶ鳥、小さな獣たちなど、身近な自然の姿が題材となっています。
花鳥画の魅力のひとつは、四季の移ろいを感じられることです。春には梅や桜、夏は蓮や朝顔、秋は菊や萩、冬は椿や牡丹と、季節ごとの花々が丁寧に描かれてきました。
登場する鳥もさまざまで、鶴や孔雀のような華やかな鳥から、鳩や雀といった、日常の中で見かける身近な鳥まで描かれています。また、草木や虫、小動物、魚などの水辺の生きものと組み合わせた作品も多く、自然の世界をいきいきと表現しています。
江戸時代に入ってから木版画の発達により、花鳥画が庶民の間にも広まり、浮世絵の題材としても注目を集めました。明治時代以降も、その人気は薄れることなく、伝統的な技法を受け継いで近代的な表現を取り入れた花鳥画も生まれました。
今回買取させていただきました商品を幾つかご紹介できたらと思います。
「千種之花」とは、明治期の日本画家・幸野楳嶺(こうの ばいれい)による、自然や花鳥を題材とした作品を集めた画集です。
タイトルにある「千種(ちぐさ)」とは、「さまざまな種類」を意味する言葉で、その名のとおり、多様な花々や自然の姿が一冊にまとめられた、まさに美しい図譜となっています。
本書は1891年(明治24年)に出版されましたが、この年は、京都の美術書出版社「芸艸堂」(うんそうどう)が
出版業を開始した年でもあり、本作は芸艸堂の初期出版物のひとつにあたります。
芸艸堂(うんそうどう)は明治24(1891)年、美術書出版社として京都で創業しました。
日本で唯一の手摺木版本を刊行する出版社であり、その技術を活用してさまざまな美術書・工芸品を制作しております(芸艸堂公式サイトより)。
明治23年(1890)から明治27年(1894)にかけて、春陽堂より刊行された『美術世界』全25巻は、明治期を代表する美術雑誌のひとつです。この刊行にあたり、渡辺省亭は編集主任として大きな役割を果たしました。
省亭自身は、古画の縮模(原画を縮小して描く仕事)を担当する一方、収録作品の中でも自作を最も多く手がけた画家でもあります。そして最終巻となる第25巻は、渡辺省亭の花鳥画を特集した巻として構成されています。
印刷には、当時一流とされた彫師・摺師が関わり、美しい多色摺の木版画によって仕上げられました。その完成度の高さから、『美術世界』は、明治期の美術雑誌の中でも格調高い存在として知られています。
岩崎常正(いわさき つねまさ)が編集した『本草図譜(ほんぞうずふ)』は、天保元年(1830)から弘化元年(1844)にかけて制作された、約2,000種もの植物を収録する、江戸時代最大級の植物図譜です。全96巻92冊という、非常に大規模な内容を誇ります。
制作の過程では、写本がいくつも作られ、印刷による出版も試みられましたが、江戸時代に実際に刊行されたのは、山草部(第5~8巻)と芳草部(第9~10巻)のみで、全巻がそろって世に出ることはありませんでした。
その後、大正11年(1922)になってようやく、本草図譜刊行会によって全冊が刊行されることになります。
今回買取させていただきましたのは、大正版『蔓草部』の29巻目です。
状態の良さ、市場での評価、そして作品が持つ歴史的価値などを総合的に判断し、10点85,900円とさせていただきました。
下表は今回の買取品とその査定額の一覧です。似たジャンルの版画のご売却をご検討中の方はご参考まで。
| 絵師 | タイトル | 買取額 |
| 河原崎奨堂 | 竹、かきつばた、牡丹、朝顔、南天 まとめて5点 | 10,000円 |
| 幸野楳嶺 | 楳嶺百鳥画譜 続編 天地人 | 26,000円 |
| 幸野楳嶺 | 千種之花 | 25,000円 |
| 中村春泥 | 錦木 | 6,100円 |
| 渡辺省亭 | 美術世界 第25巻 | 8,800円 |
| 岩崎常正 | 本草図譜 蔓草部 第29巻 | 10,000円 |
スタッフJ