取引実績5000点以上の浮世絵・版画鑑定のスペシャリストが査定
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2025 11.24
買取日記
今回は横浜絵の木版画浮世絵を中心にまとめて5点82,500円で買い取りさせていただきました。
御開港横浜之全図
江戸時代の浮世絵はもともと庶民の生活や風俗、歌舞伎などをテーマにすることがほとんどでしたが、開化絵は幕末から明治時代にかけて日本が経験した文明開化の様子を描いた浮世絵です。
江戸時代、黒船によって開国を迫られた日本に海外から一獲千金を狙う外国人が集まり、横浜の町は急速に発展します。西洋化する都市の風景や、博覧会の開催、鉄道の開業などの新しい時代の幕開けを記録することこそが開化絵です。
洋風建築や蒸気機関車が主題に描かれることが多く、その周囲に洋服や時計、外灯などといった新しい生活用品が加わります。
横浜絵は開化絵の一種なわけですが、具体的に横浜の開港や横浜の風景を描いた絵こそが「横浜絵」と呼ばれます。また、今回は買い取っていませんが、長崎が外国との交流の拠点だったことから「長崎絵」も開化絵の一種になります。同様に新潟や神戸にも開港が行われて、それらの風景を描いた絵が存在する可能性もありますが、具体的なジャンルは存在しません。
しかし、執筆者がここまで書いておきながら、ふと根本的な疑問を抱いた……そもそもなぜ日本は鎖国状態にあったのでしょうか。
16世紀後半に日本でキリスト教が急速に広まりました。しかし、徳川幕府は快く思いませんでした。キリスト教は国を乱す思想と考え、1613年に「禁教令」を出します。そこから少しずつエスカレートし、1639年にはついに完成した鎖国体制は、ペリー来航がきっかけとなった1854年の開国まで、200年以上にわたって続きました。
また、アニリンという鉱物由来の染料が海外から輸入されるようになり、この染料を使うことで鮮やかな赤を作ることが可能になりました。これにより、赤色が惜しげなく使用されるようになり、それまで高価だったベニバナの原料は次第に使われなくなりました。その結果、江戸時代の浮世絵では滅多に使用されなかった赤の染料が、大胆な表現で多用されるようになります。例えば、空を真っ赤に染める、真っ赤な背景を用いるなど、さらに歌舞伎役者の肌を赤く染めるといった表現も登場します。
三代国貞 横浜鉄道蒸気出車之図
世界初の蒸気鉄道はイギリスで1825年に開業されました。日本で初めて走った鉄道は、1853年に開国の交渉のために訪れたロシア人たちが運んだ蒸気車の模型でした。明治時代に入ってから、政府は官営による鉄道建設を決定し、横浜付近の鉄道建設が始まります。
明治時代に入ってから蒸気機関車が使われるようになったわけですが、それまでには徒歩が庶民の最も一般的な移動手段でした。そのため、例えば東海道を歩いて渡るには何日もかかることが普通で、商人たちはこの長い道のりを行き来することで、京都と江戸間の商売で大きな利益を上げていたと言われています。蒸気機関車の導入によって、かつては何日もかけて移動していた距離が数時間で進めるようになり、商業活動や社会の動きに革命的な変化がもたらされました。
以前の記事「日清戦争絵【10組 96,700円】」でも触れましたが浮世絵は人気のあるメディアであり、情報を広く伝え、庶民の関心を引き、時代の出来事を記録する手段として非常に効果的であったため、開港の姿を描いた絵を始め、鉄道も浮世絵の格好の的となりました。
状態の良さ、市場での評価、そして作品が持つ歴史的価値などを総合的に判断し、5点82,500円とさせていただきました。
下表は今回の買取品とその査定額の一覧です。似たジャンルの版画のご売却をご検討中の方はご参考まで。
| 絵師 | タイトル | 買取額 |
| 二代国鶴 | 横浜商館並ニ弁天橋図 | 18000円 |
| 不詳 | 御開港横浜之全図 | 25000円 |
| 歌川国輝 | 横浜吉田橋通繁昌之図 | 10000円 |
| 歌川貞秀 | 横浜鉄橋之図 | 14000円 |
| 三代国貞 | 横浜鉄道蒸気出車之図 | 15500円 |
スタッフJ
【参考文献】
刀剣ワールド浮世絵「開化絵とは」 https://www.touken-world-ukiyoe.jp/ukiyoe-introduction/kaikae/ (2025年11月12日参照)