お知らせ&BLOG

News & BLOG

2025 06.03

買取日記

忠臣蔵 ほか【10組 61,490円】

今回は忠臣蔵を題材にした浮世絵を中心にまとめて10組61,490円を買い取りさせていただきました。

 

歌川国輝『義士之面々敵討言上之図』

忠臣蔵について

1701〜1703年に実際に起こった浅野内匠頭(あさの たくみのかみ)・赤穂浪士の一連の出来事(元禄赤穂事件)を脚色し、浄瑠璃・歌舞伎・映画・ドラマなどで再創造されたフィクションが「忠臣蔵」になります。

事の発端は、赤穂藩主・浅野内匠頭が、江戸城松の廊下で礼儀作法を指導していた吉良上野介(きら こうずけのすけ)に突然斬りかかったことでした。浅野は「この間(かん)の遺恨(いこん)覚えたるか」と叫んで背後から斬りつけ、驚いて振り向いた吉良の額も切りました。

江戸城内で刀を抜くのは固く禁じられており、しかもその日は将軍が天皇の勅使を迎える重要な儀式の日でした。城中での刃傷沙汰に徳川綱吉は激怒し、浅野には即日切腹を命令しました。一方で、応戦していない吉良にはお咎めなしでした。

浅野は大名としての待遇を与えられず、罪人扱いのまま酒・煙草の差し入れも遺言を書くことも、自分の刀を用いることすら許されませんでした。この不公平な裁断こそが、後に赤穂藩士たちが敵討ちを決意する原因となり、「赤穂事件」の幕を開けることになります。

今回買い取りいただいた浮世絵の中から筆者が特に紹介したいのはこちらです。


歌川国輝『仮名手本忠臣蔵』12枚揃い 1848年頃

歌川国輝『仮名手本忠臣蔵』

『仮名手本忠臣蔵』について

『仮名手本忠臣蔵』とは「忠臣蔵」を題材にした歌舞伎の演目のひとつです。
国輝の作品では、忠臣蔵の各段を主題に、劇的な名場面や登場人物が表現されています。舞台の雰囲気を伝える一種の絵入り脚本としても鑑賞できる内容です。

「忠臣蔵」という呼称は、浅野が切腹した1701年から不思議にも47年後の1748年に『仮名手本忠臣蔵』が初演され、その題名に用いられたことで初めて広まった言葉です。ところでこの浮世絵は、その初演からちょうど100年後に制作された作品に当たります。
「仮名手本」は、江戸時代の寺子屋(子供たちに文字の読み・書き、場所によってはそろばんを教える庶民の教育施設のことです)で使う、文字の読み書きのお手本です。また、初演当時には47士が忠臣であるとの評価が定着していたこともあって赤穂浪士による復讐事件を「忠臣蔵」と呼ぶようになったそうです。
「忠臣蔵」が忘れ去られることなく今日まで語り継がれてきたのは、『仮名手本忠臣蔵』の名で歌舞伎や浄瑠璃で上演され続けてきたおかげと言っても過言ではないと思います。

そのほか

余談ではありますが、実は「忠臣蔵」を題材としたアメリカの実写映画が存在します。2013年に公開されたファンタジー・アドベンチャー映画『47 Ronin』は、赤穂事件を基にした日本の物語「忠臣蔵」をモチーフにしつつ、キアヌ・リーブス演じる架空の人物カイが47士に加わるなど、独自の要素を取り入れたオリジナルストーリーとなっています。海外では「忠臣蔵」の知名度は高くありませんが、その英訳である「47 Ronin」という名称は、この映画の影響で広く知られるようになりました。

さらに、忠臣蔵の主人公である赤穂浪士とその主君である浅野内匠頭の墓は、東京都港区の高輪の泉岳寺にあります。泉岳寺は忠臣蔵の聖地としても知られています。ちなみに、赤穂義士の誠心や武士道を称え供養する「赤穂義士祭」は毎年二回、12月と4月に行っております。

今回の買取について

今回は数多くの浮世絵をお売り頂きました。
状態の良さ、市場での評価、そして作品が持つ歴史的価値などを総合的に判断し、10組を61,490円とさせていただきました。
下表は今回、買取額をつけさせていただいた版画の一覧です。似たジャンルの版画のご売却をご検討中の方はご参考まで。

絵師 タイトル 買取金額
歌川国輝 假名手本忠臣蔵 12枚 12,110
歌川国輝 義士之面々敵討言上之図 3枚続 6,500
歌川国芳 義士四拾七人本望を遂 2枚不揃い 7,780
歌川貞秀 義士本望遂酒店会賀引取図 3枚続き 7,250
豊原国周 春色酒中花 2枚不揃い 3,560
歌川国政 坂東三津五郎 3枚続き 7,240
歌川豊国 夏目四良三郎 2枚不揃い 3,500
歌川豊国 お祭り金五郎 2枚不揃い 4,850
歌川豊国 朝比奈藤兵衛 2枚不揃い 3,850
歌川国貞 里見八犬伝 2枚不揃い 4,850

スタッフJ